2017年1月14日にJR東日本蕨駅で起きた旅客の転落事故について

 京浜東北線の電車が発着するJR東日本の蕨駅で2017年1月14日午前7時10分ごろ、鉄道人身傷害事故が発生した。盲導犬を連れていた男性がプラットホームから転落したところ、同駅に進入した電車に接触して死亡したという。
 盲導犬を伴っていたことからもわかるとおり、男性は視覚障害があったと見られる。そのいっぽうで蕨駅にはホームドアはなく、また報道から判断すると事故の起きた時間帯にはプラットホームを監視する駅員は配置されていなかったらしい。事故の詳細は今後発表されるであろう。今回の事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の方々には謹んでお悔やみ申し上げます。

 

 JR東日本によれば蕨駅の2015年度の乗車人員は5万9501人だ。乗車人員と等しいと考えられる降車人員を加えた同駅の利用者数は11万9002人であり、ホームドアを優先的に設置するようにと国土交通省が定めた基準である1日当たり10万人以上の利用者を上回っている。したがって、今回発生した事故に関してJR東日本には大きな落ち度が見られると言ってよい。
 事故の報を知り、多くの方々は「またか」と思われたかもしれない。視覚障害者がホームから転落した後に車両に触れて死亡する事故は、筆者が知る限りこの1年だけでも他に2件起きているからだ。日付と駅名とを挙げれば2016年8月15日の東京地下鉄銀座線の青山一丁目駅、同年10月16日の近畿日本鉄道大阪線の河内国分駅である。青山一丁目、河内国分の両駅ともホームドアは設置されていなかった。いっぽうで今回のJR東日本を含め、東京地下鉄、近畿日本鉄道の3社とも、少なくとも公表されている財務諸表からは経営難をうかがわせる材料、つまり多額の経費を要するホームドアの設置にも困窮するという状況は存在しない。
 常日ごろ筆者は多くのマスメディアからさまざまな問い合わせを受ける。なかでも近年最も多いのはホームドアに関するものであり、具体的には「なぜホームドアの普及が進まないのか」というものだ。2010年代も後半を迎えたいまになって、大都市圏の駅でいまだに設置されていない駅のほうが多い理由については国土交通省や鉄道事業者が明らかにしているのでここでは触れない。
 実を言うと去る1月12日にも、とある全国紙の記者から質問を受けた。ホームドアを設置した駅が増えているのに、プラットホームから転落する人がなぜ減っていないのかという内容だ。
 筆者は理由として3つを挙げた。一つは列車に乗り降りする際に転落するから、もう一つは痴漢やスリなどの容疑者が逃亡の際に転落するから、そしてこの理由が最も深刻と言えるのだが、ホームドアを設置していない駅での危険性が増したから、具体的にはプラットホームを監視する駅員が減少したからというものである。
 プラットホームを監視する駅員が配置されていない駅は東京の都心部でも珍しくない。JR東日本の新橋駅や神田駅でさえ日中には駅員の姿を見ることはできないのだ。率直に言って、いま挙げた両駅のプラットホームを監視する駅員が不要というのであれば、全国のどの駅にもプラットホームに駅員を配置する必要はないであろう。
 一連の痛ましい事故を受けて、人々が抱いているであろう心情を筆者が代弁したい。「豪華列車の『TRAIN SUITE 四季島』などいらないから、銀座線1000系特別仕様車両などいらないから、リニューアルされた特急車両などいらないから、その代わりどの駅にもホームドアを設置してほしい」と――。
 ホームドアの設置が遅々として進まず、事故が繰り返される責任は鉄道事業者だけにあるのではない。監督官庁の国土交通省にもあり、そして鉄道を監視しなければならない筆者のような職業の人間にも大いにある。

  • 2017.01.14 Saturday
  • NEWS


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