東京電力による計画停電と首都圏の鉄道について(速報)

 東北地方太平洋沖地震によって一部の発電所が破壊され、発電能力が落ちたことによって東京電力は計画停電を実施して大規模停電を防ぐこととなった。2011年3月14日15時現在、予定された計画停電は実施されてはいないものの、首都圏のJR東日本や大手民鉄等の各線では運休や列車の大幅な間引き運転によって大混乱が生じている。その様子は一言で申し上げて、1970年代に展開された国鉄の順法闘争のようだ。特に県庁所在地である千葉市の代表駅、千葉市には東京方面への鉄道の便が失われるなど、従来の常識では考えられない状況に陥っている。
 いままでのところ、計画停電は回避されたものの、鉄道の運転は復旧していない。電力を大量に消費する鉄道の運転を再開するとたちまち電力の需給バランスが崩れてしまうからだ。
 それでは、鉄道が必要とする電力はいかほどなのだろうか。国道交通省鉄道局監修、『平成20年度 鉄道統計年報』、電気車研究会、2010年12月(JR東海のデータは『東海道新幹線のあゆみ』、東海旅客鉄道新幹線鉄道事業本部、2005年3月)によると、首都圏に乗り入れるJR各社と大手民鉄各社との電力消費量はのとおりだったという。筆者はこれらの数値から求めた東京電力にとって必要な発電能力をまとめてみた。ラッシュ時のようなピーク時に必要な発電能力を通常時の3倍として計算しているのは、多くの鉄道にとって車両の稼働率はラッシュ時に2から3倍に高まるからであり、今回は多めに見積もって3倍と考えている。
 JR東日本は川崎火力発電所と信濃川発電所と自前の発電所を所有し、JR東海の東海道新幹線は計画停電の影響を避けるために中部電力大井川発電所からの供給に切り換えたとのことなので、正確な数値は求められない。だが、ピーク時に必要な発電能力は大手民鉄だけでも105万kWであり、JR東日本が東京電力から供給を受けている分を合わせると200万kW弱といったところではないだろうか。つまり、およそ半分の半数の列車しか運転できていないということはピーク時に約100万kWの電力を節約できたと考えられる。鉄道が消費する電力は案外多くはないものの、東京電力にとっては大規模停電を避ける頼もしい相手であることは間違いない。しかし、このような状態はいつまで続くのかは不明だ。急いで火力発電所を建設するほかない。
 弁解で恐縮だが、間もなく予定されている本日2回目の計画停電(1回目は未実施)までに本稿を間に合わせるよう、大慌てて執筆したため、データの算出方法などに誤りが見られるかもしれない。気がつかれた方はご一報くだされば幸いである。
  • 2011.03.14 Monday
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東北地方太平洋沖地震につきまして

  2011年3月11日14時46分ごろに発生いたしました東北地方太平洋沖地震は甚大な被害をもたらし、多くの方々が被災されたことは既報のとおりです。被災された皆様にはお見舞いを申し上げ、命を落とされた方々には謹んで哀悼の意を申し上げます。また、被害に遭われた方々の救助、救援にあたっておられる皆様には感謝の意を表明いたしますとともに、遂行される任務の安全を祈願する次第です。
 今回の地震は、筆者が専門としている鉄道に関しましても大きな被害をもたらし、同時に多くの課題を残しました。海岸沿いに線路が敷かれていることの是非、大都市における帰宅難民への問題など、一部は各メディアを通じてコメントいたしましたが、今後改めて検証していきたいと考えております。
 しかしながら、鉄道について考えられるのも命あってのことでしょう。私事ながら、筆者は千葉県富津市の東京湾沿岸に居住しておりまして、自宅は地震とともに停電となり、直後に発表となった大津波警報に伴う避難指示によって避難し、避難所で一夜を過ごしました。当地での津波の被害に関しましては太平洋沿いの皆様とは比べものにならないほど小さなものですが、それでも市内の漁港では漁船が打ち上げられたり、一部で浸水したと聞いております。巨大な自然の力を前に、「間一髪で生き延びることができた」との感想が偽りのない心境です。
 ほぼ一日というわずかな時間ではありますが、避難者となった筆者の経験から、今後皆様のご参考になるような意見の表明あるいは行動を取っていきたいと考えます。最後になりましたが、ここで再度被災者の皆様にお見舞いを申し上げますとともに、現在行方がわからなくなっておられる方々の無事を祈念いたします。
  • 2011.03.13 Sunday
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広田尚敬著、『鉄橋コレクション 変わりゆく風景、変わらない風景』ご購読の勧め

 2010年11月25日に講談社から『鉄橋コレクション 変わりゆく風景、変わらない風景』という名の書籍が発売となった。著者は鉄道写真のパイオニアにして第一人者の広田尚敬氏。B5判・175ページで発行は講談社、定価は3800円(税別)である。
 本書は、全国各地に点在する鉄道の橋梁の最も美しい姿を収めた写真集だ。広田尚敬氏の鉄道写真家生活60周年を記念して出版される写真集の第5弾だけあって、本書に収録されている作品はおよそ半世紀の時間をかけて撮影したものから厳選されている。どのページを開いても、広田氏の唯一無比の感性と、超絶とも言える技術とに裏打ちされた橋梁の写真が目に飛び込み、その迫力に圧倒されることは間違いない。
 僭越ながら、本書において筆者と史絵.は橋梁に関するデータの調査を実施し、同時に筆者は「鉄橋の豆知識」という拙文を執筆した。自らが手がけた著作物ということもあり、本書を評するとどうしても宣伝がましく受け取られてしまう。だからといって本書を紹介しないのはあまりにも惜しく、鉄道業界そして出版界においても大きな損失であると考えた。したがって、通常は認められない手法での紹介をお許しいただきたい。
 本書に収められた300余りの橋梁の作品の一つ一つは膨大な手間を要して撮影された。車両や列車の扱い、季節や天候の表現、背景の処理と、橋梁の一つ一つにおいて広田氏がイメージしたとおりの姿になるよう、試行錯誤を重ねた末に記録されたものである。その点については、本書に所収の橋梁を実際に訪れていただければおわかりになるだろう。実物の橋梁は広田氏が撮影した作品のようにはまず見えないからだ。
 筆者は橋梁のデータ作成に当たり、まずは橋梁の名称を確定させる作業から取りかかった。その際に大いに参考になったのは、社団法人土木学会が発表した歴史的鋼橋のデータベースである。だが、広田氏の撮影記録から明らかに同一の橋梁だと思われたにもかかわらず、作品に写し込まれた橋梁の姿と学術的に撮影された橋梁の姿とがあまりに違いすぎて、名称の確定に困難を来したものも多く現れた。まさに広田氏でなければ写し得なかった橋梁の姿が収められている事実の証左である。
 手前味噌となるが、広田氏の作品の迫力に負けぬよう、本書は橋梁のデータの項目にさまざまな要素を盛り込み、万全を期した。長さはもちろん、構造や材質、架設年月といった点だ。特に下部構造、つまり橋梁の基礎部分についての詳細はこの種の書物で触れられることは少なかったので、興味深くお読みいただけるのではないかと自負している。
 今回の調査に際し、ご多忙にもかかわらず、橋梁のデータをご提供いただいた鉄道事業者、軌道経営者各位のご尽力には改めて感謝の意を表したい。懇切丁寧なご回答から、いかに鉄道の当事者たちが橋梁というものを大切にしているかを再認識することができた。
 余談だが、鉄道事業者、軌道経営者各位のなかには、自らが所有する橋梁が広田氏の写真集に取り上げられることを光栄だととらえ、感謝の言葉を口にされたところも数多い。広田氏がこれまでいかに鉄道界の発展に貢献してきたかを示すエピソードであるとともに、氏の人徳が多くの人々に理解されていることに当方も史絵.も幸福な気分となった。
 間もなく2010年も暮れようとしている。引き続き本年も数多くの鉄道書が世に送り出された。恥ずかしながら筆者も史絵.との共著を含めて5冊を上梓した。それらのなかでも本書はひときわ輝く存在だと言える。鉄道に興味を抱いておられる方、近代産業遺産に深い関心をお持ちの方にはまさに必携の書である。本書が一人でも多くの皆様の目に触れ、作品を通じて橋梁ひいては鉄道そのものの魅力に感じ入っていただければ、関係者としてこれに勝る幸せはない。
  • 2010.12.20 Monday
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2010年7月22日

「鉄道よもやま話」を更新しました
JR西日本の車掌が自社の電車に搭載された防護無線の予備電源装置のヒューズを抜き取ったとして、偽計業務妨害と器物損壊の容疑で大阪府警察に逮捕されました。この件につきまして、取り急ぎ「鉄道よもやま話」で筆者の考えを申し上げます。

備後落合駅17時05分発、三次駅行き第363D列車より JR西日本芸備線備後西城-平子間にて 2010年6月9日撮影


「The dream is over(夢は終わった)」(ジョン・レノン、「God」より)

「ぼくには君の目を醒ますことはできない。君になら君の目を醒ますことができるんだ。ぼくには君の傷を治せない。君になら君の傷を治せるんだ。」(「PLAYBOYインタビューPART2 ジョン・レノン」、「PLAYBOY日本版第69号」、1981年3月、166ページ)
  • 2010.06.13 Sunday
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2010年6月10日

JR東海社員によるIC乗車券の不正使用について
 標記の件について、JR東海は2010年6月9日付けで社内調査の結果を公表し、該当する85人の社員についての処分も合わせて発表しました。梅原淳はこうした一連の不正使用はまことに遺憾であると考え、共同通信社を通じて2010年6月9日付けでコメントしております。この問題につきましては改めて述べたいと考えます。
  • 2010.06.11 Friday
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2010年4月2日

「都市問題」2010年4月号ご購読の勧め

 「都市問題」2010年4月号(財団法人東京市政調査会)が4月1日に発売となった。特集1は「高速鉄道の世界的新時代」である。本特集には、交通評論家の角本良平氏、京都大学大学院工学研究科教授の中川大氏、大東文化大学教授の今城光英氏、海外鉄道技術協力協会の秋山芳弘氏とそうそうたる顔ぶれが論文を寄せ、筆者も末席ながら「新幹線の技術力」と題して寄稿させていただいた。
 拙稿はともかくとして、本特集の論文はいずれも読みごたえのあるものばかりで、昨今の鉄道ブームで乱造されている文字の塊とは一線を画している。なかでも、筆者が感銘を受けたのは交通評論の大御所である角本良平氏の論文 「『新幹線』は正しかったか―過去70年の評価と今後の展望」だ。どのような内容なのかは「都市問題」をご購入いただくとして、その魅力の一端に触れられるよう、最後の一節を引用したい。
 「自動車・航空機の時代においては、鉄道の旅客輸送は『引き算』でしかない。まず自動車と航空機が選択され、それらでは運べない需要が鉄道に残るだけなのである。
 戸口から戸口への自動車、亜音速の飛行機の魅力は非常に大きい。現に、それらの能力を政治が整備しているとき、鉄道もといっても、利用は限られる。国内において、この現実を直視すべきであり、海外においてもそうなのである。」(角本良平、「『新幹線』は正しかったか―過去70年の評価と今後の展望」、「都市問題」2010年4月号、財団法人東京市政調査会、8ページ)
 筆者はここ10年の間、鉄道について他人が記した文章で、これ以上の正論を見た記憶がない。それほど今日の鉄道言論界は社会から隔絶された意見ばかりがまかり通っているのだ。
 日本の鉄道は、いまから32年前の1978年10月2日に国鉄が実施した列車ダイヤ改正を境にその姿を大きく変えた。それは、鉄道は自らが得意とする大量輸送と中距離輸送とで活路を見いだし、そうでない分野は縮小するという内容である。しかし、昨今の鉄道言論界はこうした歴史から学ぶことを怠り、いまだに半世紀も前のセンチメンタリズムを振り回して採算の取れない路線や列車に向けていたずらに郷愁を煽るだけだ。こうした行き過ぎた鉄道至上主義は、少子化が進む社会にあっては子孫に負債を押し付けるだけの背任行為とさえ言える。
 社会の大きな枠組みのなかでは、鉄道は大量輸送を得意とする交通機関であるに過ぎない。したがって、鉄道だけですべての交通需要をまかなうことなど不可能だ。もしも今日、鉄道が他の交通機関との競争に勝利し、すべてを消し去ってしまったとしたら、困るのは鉄道自身なのである。
 一例を挙げよう。現実的な問題として、鉄道のメンテナンスには線路に並行する道路と自動車とが欠かせない。逆に言えば、線路に並行する道路が通行止めとなれば、その鉄道は運行が不可能となってしまう。これは筆者の意見ではなく、歴史に刻まれた厳然たる事実だ。2005年12月から翌2006年1月にかけて新潟県内が豪雪に見舞われたとき、除雪車を用いて線路の除雪作業が可能であったにもかかわらず、並行する道路が通行止めとなったためにJR東日本の只見線は長期間不通となった。
 筆者は鉄道ブームを否定しないものの、ブームに便乗して鉄道への偏執狂的な愛情だけが跋扈する刹那的な状況を危惧せざるを得ない。そのようななか、角本良平氏の論文は本物だけがもつ風格をもち、しかも鉄道への真の愛情に満ちた内容となっていて、鉄道の未来を大いに示唆する内容となっている。繰り返しとなるが、「都市問題」2010年4月号のご購読をぜひともお勧めしたい。
  • 2010.04.02 Friday
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2010年3月29日その2

鉄道ジャーナリスト史絵.ホームページ開設のお知らせ
 遅くなりましたが、梅原淳事務所の一員として活躍中の鉄道ジャーナリスト史絵.がホームページを開設いたしました。アドレスはhttp://shie-rail.umehara-train.com/です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 なお、当面の間、当方に関する出版物・掲載誌に関しましては史絵.のホームページにて紹介することといたします。こちらもご覧いただければ幸いです。
  • 2010.03.29 Monday
  • NEWS

2010年3月29日

「鉄道よもやま話」を更新しました
「鉄道よもやま話」に「大阪市交通局7号線(長堀鶴見緑地線)で発生した鉄道重大インシデントについて」を追加しました。

2010年2月24日

緊急 JR西日本の沿線で発生した運行妨害につきまして
 既報のとおり、JR西日本の沿線ではお座敷客車「あすか」の運転に際し、撮影を目的とする一部の鉄道愛好家による線路内の立ち入りによって運行が妨害される事態が続けて発生いたしました。この件に関しまして、取り急ぎ、当方の意見を以下のとおり表明したいと存じます。

1.鉄道趣味を楽しむことを愛するのではなく、鉄道そのものに興味を抱いてください。安全や定時性が保たれてこそ鉄道に存在する価値が生じます。鉄道を愛する者が鉄道を殺してはなりません。

2.写真とは真実を写すものです。大勢の人が集まるような状況で撮影したにもかかわらず、車両以外に他に人や物が写っていない写真にいかほどの味わいが得られるのでしょうか。

3.一部のメディアのなかには、鉄道愛好家のあるべき姿とは偏執的に収集することが第一義であり、そのためには著しく社会性に欠けていたり、視野が狭くても差し支えないとの考えを流布しているところもありますが、そのようなことは決してありません。社会や家庭での生活と両立させてこその趣味であり、趣味の成果を他人と競うことなど無意味です。

以上でございます。

2010年2月24日 梅原 淳
  • 2010.02.24 Wednesday
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