2012年1月11日 速報 山崎正夫前JR西日本社長の無罪判決について

 2005年4月25日に発生した西日本旅客鉄道株式会社福知山線塚口駅〜尼崎駅間列車脱線事故(以下、福知山線列車脱線事故)に関し、刑法第二百十一条第一項の業務上過失致死傷等の罪に問われていた山崎正夫前JR西日本社長に対し、2012年1月11日午前、神戸地方裁判所は無罪(求刑は禁固3年)を言い渡した。筆者には判決が妥当であるとか、不当であるといった感想は一切ない。理由は後ほど触れることにしよう。
 筆者は2011年11月に共同通信社から判決の見通しを求められた。その際、一審では執行猶予付きの有罪と回答したので予想は外れたこととなる。ちなみに、共同通信社にはコメントしなかったものの、筆者は二審では無罪の判決が出され、最高裁判所に上告された後、無罪が確定と考えていたので、無罪の判決は一段階早かったと言えよう。
 恐縮ながら、筆者は公判を傍聴したことはない。取材した記者の話や記事から判断するに、今回の裁判は争点が少々ずれていたのではないかと感じられる。山崎前社長が鉄道本部長在任中の責任を問う裁判であるから、福知山線列車脱線事故が起きた場所に速度照査機能をもつATS(自動列車停止装置)の不設置を決めたという具体的な責任が追及されるのかと思いきや、この事故を予見できたかどうかについての責任が問われていた。起訴の経緯からやむを得ないかもしれないが、これでは現業部門の責任者への裁判というよりも、JR西日本という鉄道事業者としての責任、そして鉄道事業者全体、さらには監督者の国土交通省の責任まで問うような内容を山崎前社長に追及していたのではないかと勘ぐられても不思議ではない。事実、公判中の記事を見返しても、明らかに山崎前社長が社長在任時の責任であると混同して書かれている記事が散見された。
 かような裁判であっても過去には有罪判決が出された例も見受けられるので、筆者は執行猶予付きの有罪と予想したが、これはなかなか苦しい判決である。ならば無罪判決がすっきりとしているのかといえば、本来争うべき点とは異なっているためにそうとも思えない。したがって、筆者は何の感想も抱き得ないのである。
 以前から指摘していることではあるが、今回の裁判でも国土交通省の前身である運輸省の関与ぶりがあまりというか全くと言ってよいほど重視されていなかった。たとえば、運輸省は1967年1月に鉄運第11号として地方鉄道法(現在は廃止。対象は鉄道事業法によるJR以外の鉄道事業者に相当)による事業者向けに「自動列車停止装置の設置について」といって速度照査機能付きのATSの導入を促す通達を出していたものの、民営化直後のJR各社のATSは安全度が低いということに配慮して廃止した点、またJR西日本に対して速度照査機能を備えたATS-Pの導入を指導した結果、大阪環状線と阪和線とに設置されたという事実がそれぞれ見過ごされている。JR西日本が運輸省の指導にどの程度従ったのか、さらには同省がどれだけの強制力をもって指導したのかまではいまだにはっきりとはしていない。山崎前社長の責任を問う過程で国土交通省の監督責任が問われることを避けたのか、あるいは単純に看過されたのかと考えるが、理由は不明だ。
 いずれにせよ、筆者は判決文も判決要旨も未読である。したがって、いまは雲をつかむような内容となるコメントしか出せない点をご容赦いただきたい。

  • 2012.01.11 Wednesday
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2011年9月19日 『鉄道の未来学』発売のお知らせ

  梅原淳が執筆いたしました『鉄道の未来学』(角川oneテーマ21。定価は税込みで760円)が2011年9月10日に角川書店より発売となりました。本書は、2010年代後半から2020年代にかけての鉄道の姿を展望し、問題点について可能な限り解決策を示したものです。ぜひ一度お手にとっていただければ幸いです。
 ところで、すでにお読みいただいた皆様から、本書の記述の誤りに関するご指摘をいただきました。当方の確認ミスによるものでございまして、おわびして訂正いたします。誤りの生じた具体的な場所と訂正点につきましては「鉄道よもやま話」中、「『鉄道の未来学』の正誤」をご覧ください。
  • 2011.09.19 Monday
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東京電力による計画停電と首都圏の鉄道について(速報)

 東北地方太平洋沖地震によって一部の発電所が破壊され、発電能力が落ちたことによって東京電力は計画停電を実施して大規模停電を防ぐこととなった。2011年3月14日15時現在、予定された計画停電は実施されてはいないものの、首都圏のJR東日本や大手民鉄等の各線では運休や列車の大幅な間引き運転によって大混乱が生じている。その様子は一言で申し上げて、1970年代に展開された国鉄の順法闘争のようだ。特に県庁所在地である千葉市の代表駅、千葉市には東京方面への鉄道の便が失われるなど、従来の常識では考えられない状況に陥っている。
 いままでのところ、計画停電は回避されたものの、鉄道の運転は復旧していない。電力を大量に消費する鉄道の運転を再開するとたちまち電力の需給バランスが崩れてしまうからだ。
 それでは、鉄道が必要とする電力はいかほどなのだろうか。国道交通省鉄道局監修、『平成20年度 鉄道統計年報』、電気車研究会、2010年12月(JR東海のデータは『東海道新幹線のあゆみ』、東海旅客鉄道新幹線鉄道事業本部、2005年3月)によると、首都圏に乗り入れるJR各社と大手民鉄各社との電力消費量はのとおりだったという。筆者はこれらの数値から求めた東京電力にとって必要な発電能力をまとめてみた。ラッシュ時のようなピーク時に必要な発電能力を通常時の3倍として計算しているのは、多くの鉄道にとって車両の稼働率はラッシュ時に2から3倍に高まるからであり、今回は多めに見積もって3倍と考えている。
 JR東日本は川崎火力発電所と信濃川発電所と自前の発電所を所有し、JR東海の東海道新幹線は計画停電の影響を避けるために中部電力大井川発電所からの供給に切り換えたとのことなので、正確な数値は求められない。だが、ピーク時に必要な発電能力は大手民鉄だけでも105万kWであり、JR東日本が東京電力から供給を受けている分を合わせると200万kW弱といったところではないだろうか。つまり、およそ半分の半数の列車しか運転できていないということはピーク時に約100万kWの電力を節約できたと考えられる。鉄道が消費する電力は案外多くはないものの、東京電力にとっては大規模停電を避ける頼もしい相手であることは間違いない。しかし、このような状態はいつまで続くのかは不明だ。急いで火力発電所を建設するほかない。
 弁解で恐縮だが、間もなく予定されている本日2回目の計画停電(1回目は未実施)までに本稿を間に合わせるよう、大慌てて執筆したため、データの算出方法などに誤りが見られるかもしれない。気がつかれた方はご一報くだされば幸いである。
  • 2011.03.14 Monday
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東北地方太平洋沖地震につきまして

  2011年3月11日14時46分ごろに発生いたしました東北地方太平洋沖地震は甚大な被害をもたらし、多くの方々が被災されたことは既報のとおりです。被災された皆様にはお見舞いを申し上げ、命を落とされた方々には謹んで哀悼の意を申し上げます。また、被害に遭われた方々の救助、救援にあたっておられる皆様には感謝の意を表明いたしますとともに、遂行される任務の安全を祈願する次第です。
 今回の地震は、筆者が専門としている鉄道に関しましても大きな被害をもたらし、同時に多くの課題を残しました。海岸沿いに線路が敷かれていることの是非、大都市における帰宅難民への問題など、一部は各メディアを通じてコメントいたしましたが、今後改めて検証していきたいと考えております。
 しかしながら、鉄道について考えられるのも命あってのことでしょう。私事ながら、筆者は千葉県富津市の東京湾沿岸に居住しておりまして、自宅は地震とともに停電となり、直後に発表となった大津波警報に伴う避難指示によって避難し、避難所で一夜を過ごしました。当地での津波の被害に関しましては太平洋沿いの皆様とは比べものにならないほど小さなものですが、それでも市内の漁港では漁船が打ち上げられたり、一部で浸水したと聞いております。巨大な自然の力を前に、「間一髪で生き延びることができた」との感想が偽りのない心境です。
 ほぼ一日というわずかな時間ではありますが、避難者となった筆者の経験から、今後皆様のご参考になるような意見の表明あるいは行動を取っていきたいと考えます。最後になりましたが、ここで再度被災者の皆様にお見舞いを申し上げますとともに、現在行方がわからなくなっておられる方々の無事を祈念いたします。
  • 2011.03.13 Sunday
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2010年6月10日

JR東海社員によるIC乗車券の不正使用について
 標記の件について、JR東海は2010年6月9日付けで社内調査の結果を公表し、該当する85人の社員についての処分も合わせて発表しました。梅原淳はこうした一連の不正使用はまことに遺憾であると考え、共同通信社を通じて2010年6月9日付けでコメントしております。この問題につきましては改めて述べたいと考えます。
  • 2010.06.11 Friday
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2010年3月29日その2

鉄道ジャーナリスト史絵.ホームページ開設のお知らせ
 遅くなりましたが、梅原淳事務所の一員として活躍中の鉄道ジャーナリスト史絵.がホームページを開設いたしました。アドレスはhttp://shie-rail.umehara-train.com/です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 なお、当面の間、当方に関する出版物・掲載誌に関しましては史絵.のホームページにて紹介することといたします。こちらもご覧いただければ幸いです。
  • 2010.03.29 Monday
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2010年2月24日

緊急 JR西日本の沿線で発生した運行妨害につきまして
 既報のとおり、JR西日本の沿線ではお座敷客車「あすか」の運転に際し、撮影を目的とする一部の鉄道愛好家による線路内の立ち入りによって運行が妨害される事態が続けて発生いたしました。この件に関しまして、取り急ぎ、当方の意見を以下のとおり表明したいと存じます。

1.鉄道趣味を楽しむことを愛するのではなく、鉄道そのものに興味を抱いてください。安全や定時性が保たれてこそ鉄道に存在する価値が生じます。鉄道を愛する者が鉄道を殺してはなりません。

2.写真とは真実を写すものです。大勢の人が集まるような状況で撮影したにもかかわらず、車両以外に他に人や物が写っていない写真にいかほどの味わいが得られるのでしょうか。

3.一部のメディアのなかには、鉄道愛好家のあるべき姿とは偏執的に収集することが第一義であり、そのためには著しく社会性に欠けていたり、視野が狭くても差し支えないとの考えを流布しているところもありますが、そのようなことは決してありません。社会や家庭での生活と両立させてこその趣味であり、趣味の成果を他人と競うことなど無意味です。

以上でございます。

2010年2月24日 梅原 淳
  • 2010.02.24 Wednesday
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2009年10月24日

鉄道ジャーナリスト史絵.の誕生につきまして
 皆様に報告がございます。2009年10月1日から、梅原淳は新進気鋭の鉄道ジャーナリストとともに、執筆その他の活動を進めていくことと相成りました。
 このたび、鉄道ジャーナリストとしてデビューした者の名を史絵.(オフィシャルブログ「史絵.の鉄道旅」)と申します。史絵.はそれまで鉄道女優という肩書のもと、芸能活動を行っておりました。しかし、鉄道への想いをめぐらせているうちに鉄道女優では物足りなくなり、もっと広く、そしてもっと深く鉄道を理解し、その魅力やさまざまな課題を執筆を通じて世に伝えたいという決意を抱き、今回鉄道ジャーナリストとしてスタートを切ることとなった次第でございます。
 世は鉄道ブームと言われておりまして、史絵.もそのブームに便乗しての活動開始ではなかろうかとお考えの方も多いことでしょう。しかし、そのようなことはないと断言いたします。史絵.に対し、当方といたしましてはまずは鉄道に関する基礎知識を身に付けさせる所存です。そのうえで、一読しただけでわかる文章の記し方を指導してまいります。ブームによって鉄道への理解が深まったいまだからこそ、地に足を付けて一歩ずつ進んでいくことの大切さを学ぶ必要があるのではないでしょうか。
 来る2010年代、鉄道は1980年代と同様に大きな転機を迎えることは間違いありません。そのような状況のなか、史絵.は鉄道が社会の一員であるという大局的な見地に基づき、公正な評価のもと、若々しく、なおかつ独創的な考察を皆様に披露することを通じて社会に貢献し、ひいては皆様の幸福に寄与することを目標としております。皆様におかれましては、梅原淳ともども、史絵.にもご指導ご鞭撻いただければ幸いです。
 このたび、史絵.のデビューにあたり、僭越ながら当方の活動拠点を梅原淳事務所と名乗らせていただき、所在地も東京都大田区内から千葉県富津市内へと移転いたしました。梅原淳はもちろんのこと、史絵.へのご連絡につきましても、これまでどおり「梅原 淳へのお問い合わせ、ご依頼フォーム」をご利用ください。また、史絵.へのご連絡はshie-rail@umehara-train.comあてでも結構です。今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。
  • 2009.10.24 Saturday
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2009年9月28日の予告

福知山線脱線事故の最終報告書案の漏えい問題について
 既報のとおり、JR西日本は「西日本旅客鉄道株式会社福知山線塚口駅〜尼崎駅間列車脱線事故の報告書」を作成していた航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)の一部の委員に接触し、報告書の内容を事前に聞き出し、また、同社に不利とならない内容とするよう働きかけたという。あまりに軽率な行動であり、なおかつ事実が明るみになったときのリスクが巨大という点であきれてものも言えない。恐らくは、JR西日本の社内でも、このような不祥事にかかわった経営陣以外の人たちは筆者と同じような感想を抱いていることだろう。
 JR西日本が求めたというATSに関する記述の削除など、運輸省が1967(昭和42)年1月に地方鉄道事業者向けに発した「自動列車停止装置の設置について」という通達の「(2)速度照査機能をそなえ、速度照査地点を超えて列車が進行する場合、自動的に制動装置が動作するものとする。」という条文が存在した事実だけで簡単に否定される。この点についてJR西日本の経営陣が知らなかったというのはあまりにお粗末であるし、それを国鉄OBの委員に頼めば何とかなると考えた幼稚な思考にも驚く。たちのの悪い冗談にすら思えてしまうのだが、これが現実であることに筆者はいっそう落胆させられる。
 今回の不祥事について、筆者は9月28日午前6時30分からニッポン放送「上柳昌彦のお早うGood Day」にてコメントさせていただくこととなった。発言の趣旨はいま挙げた事柄のとおりである。不祥事の核心に迫るべく、筆者の考えを発表させていただきたい。お聴きいただける環境におられる方は、ぜひともお耳を傾けていただければ幸甚に存じます。
  • 2009.09.28 Monday
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2009年6月21日その2

「出版物・掲載誌」を更新しました
梅原淳が執筆した記事が「ひととき」2009年7月号(ジェイアール東海エージェンシー)に掲載されております。ぜひ一度ご覧ください。
  • 2009.06.21 Sunday
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